「視覚障害者女性に向けた性被害実態調査アンケート」の結果のご報告

※視覚障がい者の方用にテキスト表記をしております。

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視覚に障害を持った女性に対する性被害の実態調査アンケートの報告

一般社団法人日本視覚障がい者美容協会(JBB) 2021 年 12 月 17 日

【目的】 視覚に障害を持った女性の性被害の実態を調査し、社会に伝える。
【調査方法】 WEB アンケートを作成し、JBBの WEB サイトにて公開した。
WEB アンケートについて、JBBの会員らおよび国内の視覚障がい者支援団体がサポートする視覚障がい者女 性らに向けてJBBのSNSおよびメールマガジン、各支援団体のメーリングリストで告知を行った。
【調査内容作成】アンケート項目は、JBBの晴眼者スタッフと視覚障がい者スタッフが協議を重ね、決定した。
【調査内容】アンケートでは、性別、出来事の内容を尋ね、どこで起きた出来事か、被害に遭った頻度、加害者 との関係性、相談行動、社会に要望したいことなどについて尋ねた。
【調査期間】2021年11月16日~2021年11月30日
【対象者】視覚に障がいがある女性(年齢は不問)
【倫理事項】説明文で、性被害に遭った経験があるかを問うアンケートであると明記し、個人が特定される情報 は尋ねないこと、回答は任意であること、回答を途中でやめても不利益がないことなどを明記の上、結果を公表 することなどを記載した。
【分析】データの分析はJBBのスタッフが分析。
【データ概要】
・総回答数は68 件であった。(約 300 名に発信) ・そのうち最初の質問で選択項目を誤り、その後の回答に矛盾が生じている1データを含む、68件のデータお よび、出来事内容別に分析を行った。 ・また、回答者への負担を軽減するため、2~9の項目で「回答しない」という選択肢を設けた。欠損値が生じ ているとみられるが、いずれの問いも回答があった数の通り表記した。

  ①視覚障害に乗じたと考えられる状況で、性的な嫌 がらせを受けたり、性的に不快な思いをしたりする など性的な被害に遭われたことはありますか。 
ある⇒70.6%(48 人)
ない⇒29.4%(20 人)

②性的な嫌がらせや、性的に不快な思いをした経 験は、一度でしたか。それとも、これまで複数回あ りましたか。複数回あった場合は、頻度を教えてく ださい。
一度きり⇒14.3%(7 人) 
過去に数回⇒69.4%(34 人)
 10 回以上⇒16.3%(8 人)

③それは、どのような被害でしたか。(複数回答可) 1、同意のないボディタッチ⇒32(66.7%) 2、同意のない性交⇒4(8.3%) 3、痴漢⇒27(56.3%) 4、つきまとい⇒23(47.9%) 5、待ち伏せ⇒6(12.5%) 6、盗撮⇒2(4.2%) 7、電車で知らない人からしつこく声を掛けられる⇒12(25%) 8、手引きの際に手をつながれる⇒20(41.7%) 9、不快な性的ジョーク⇒24(50%) その他

  ※回答1~9以下は、「その他」として、自由記述で回答があったものです。「抱きつかれた」「カーテンの隙間から着替えを見 られていた」「不快な声がけと軽いつきまとい」「勤務先の治療の台でそのまま性的行為をされた」「誘導される際に後ろから腰 を抱かれるようにされた」「性交時の同意のない避妊具の不使用」「医師ではない人が施術の際に患部を触ろうとする」「誘導す るために差し出された腕が胸に当たる」といった回答がありました。

④どこで被害に遭われましたか(複数回答可) 1、外出先の街中⇒27(55.1%) 2、自宅近く⇒18(36.7%) 3、電車内⇒30(61.2%) 4、職場⇒14(28.6%) その他(タクシー乗車時、駅の構内、接骨院、お店、伴奏の会など)

⑤加害者との関係性を教えてください(複数回答可) 1、知らない人⇒40(81.6%) 2、客⇒12(24.5%) 3、同僚⇒13(26.5%) 4、友人・知人⇒15(30.6%) 5、親戚⇒2(4.1%) その他(街や駅で声を掛けてくれた人、駅員、国立リハビリ施設職員、学校の先生など)

⑥いつごろ被害に遭われましたか。(複数回答可) 1、半年以内⇒6(12.2%) 2、半年以上前~5年以内⇒20(40.8%) 3、5年以上前~10年以内⇒25(51%) 4、10年以上前⇒21(42.9%) 

⑦被害に遭った後、家族や知人・友人以外で、警察など の公的機関や民間の相談窓口に相談されましたか。
相談した⇒16.3%(8 人) 
相談していない⇒83.7%(41 人)

 ⑧<問い7で「相談した」と答えた方へ>相談した際、目が不自由なことによって困難だと感じたことがあれば 教えてください。(例:目が見えないため、被害当時の状況や加害者の容姿を説明できなかった)
 【主な回答】(一部抜粋)
 ・加害者の容姿が分からず、説明が難しかった。
 ・相手の容姿が見えなかったから説明出来なかった。警察に伝えたが、視覚障害=目が見えない、ということ
 自体が理解できないようだった。
 ・直後に交番に被害届を出したが、警察官から「目が見えないんだから、おとなしく家にいなさい。外出するん
 じゃない。」と逆に注意されてしまいショックだった。
 ・悪意の有無が判断できない場合がある。
 など 7 件の回答があった。

 ⑨<問い7で、「相談しなかった」と答えた方へ>相談されなかったのは、どうしてでしょうか(自由記述)
【主な回答】(一部抜粋) ・相手が特定できない。被害を証明するのが難しかった。
ら。
 ・見えないので、加害者の特徴を聞かれても答えられないと思ったから。
 ・誰に相談してよいかわからなかった。
 ・転職の大変さを経験していたので、我慢した。(職場で被害に遭った女性)
 ・健常者と一緒に歩くように言われ、一人で外出することがいけないように言われると嫌だと思った。
 ・相手に悪意があったわけではなさそうだったから(単にガイドの正しい方法を知らなかったり、親切心
 で声をかけたりしているような様子だったから)。不快に感じたが、被害というには些細なことだったか
 ・相談先が分からないし、どうせ障害者の話は聞いてもらえないことが分かっているから。
 ・知られたくなかった。周囲の方からの信頼が厚い人なので、だれかに話したところで信じてもらえない
 だろうと思った。
 ・加害者やその他周りの人間との関係性が悪くなると、今後仕事や日常生活を送るのが余計にしんどいと
 思ったから。
 ・ケガをしたわけでもなく、証拠も何もなく、相談してもあまり意味がないと思ったから。また、どこに
 相談して良いかも分からなかったから。
 ・学校で先生の存在は絶対で、刃向かうと学校生活に支障が出るため。
 ・犯人の顔が見えないため、情報が不十分だと感じたから。
 など他 37 件の回答があった。

⑩視覚に障害を持つ女性が、性的な被害に遭いやすいという実態があります。そういった実態について、感 じられること、社会に要望したいことなどご意見があればお伺いしたいです。
 【主な回答】(一部抜粋)
 ・視覚障害者が被害に遭っているところを目撃した場合は、他人事と思わず行動してほしい。
 ・はたから見て何か困っているように見えたら声を掛けてほしい。
 ・加害者の顔や服装が記録できるよう、防犯カメラを普及してほしい。小型カメラを身につけられるよう
 になってほしい。
 ・正しい手引きの仕方を知ってほしい。
 ・視覚障害者に対する声掛けやガイドヘルプを健常者の方に伝える際には、適度な距離感やマナーを守る
 ことも教えてほしい。
 ・地方には特に相談窓口がないに等しい。地方の人ももっと身近で話せる環境を作ってほしい。
 ・警察や相談窓口で、視覚障害者についての理解を行き渡らせてほしい。
 ・説明や代筆を依頼するときに、不必要にゆっくり大きな声で話す方がいるが、プライバシーが漏れやす
 いので、個人情報に配慮して他の方には聞こえないように話してほしい。
 ・匿名で相談できる障害者用の相談先があったら、やりきれない思いをせずに済んだと思う。
 ・このような性的被害があると、善意で声を掛けてくれているのかどうかの判断が難しくなるので本当に
 やめてほしい。被害の実態をもっと世の中に呼び掛けてほしい。
 ・駅での案内の際のアナウンスはやめてほしい。
 ・見えないことにつけ込んで卑劣な行為をすることは、断じて許せない。ただ、「犯罪」と、手引きの仕方
 を知らずに手を握ってしまった人を、同じように扱ってほしくはない。視覚障害に限らず、困っている人
 を見かけたら手をさしのべようという本来人が持っている自然な行動が、「正しい援助方法かどうか分か
 らないから声をかけないでおこう」となってしまわないか心配。善意ある人の「手を差し伸べたい」とい
 う行動にブレーキをかけるようなことがないようにしてほしい。
 ・ドライブレコーダーのようなものが必要だ。
 など 68 件の回答があった。

アンケート結果を受けてJBBより 

今回のような一斉アンケートは、弊会としては初めての試みでしたが、68名もの視覚障がい者女性からご回答をいただきました。70%以上の方が性的被害に遭ったことがあると回答され、「相手の特徴が確認できず、相談を思 いとどまってしまう」「障がい者が相談できるところが少ない」「白杖が障害の目印になってしまう」といった実態 が判明しました。また、この様な性的被害があることで、本来、視覚障がい者にとって必要なサポートであるはずの 手引き(誘導)をしようという方を遠慮させてしまう恐れもあると思いました。
今回ご回答いただけなかった、多くの視覚障がい者女性の無言の声があることも真摯に受け止め、社会全体で取り 組んでいかなければならないと強く感じております。
JBBでは、今回いただいたご意見ご要望に基づき、視覚障がい者への適切な声掛けや正しい手引き(誘導)の方 法、マナーなどが分かるハンドブックを作成し、全国の公共機関・企業・サービスを提供する全ての方に活用いただ けるよう取り組んで参ります。
アンケートにご協力をいただいたすべての方に、勇気を出して回答して良かったと実感していただけるよう、スタ ッフ一丸となって取り組んでまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人日本視覚障がい者美容協会(JBB) 
スタッフ一同

取り上げられた記事の一例

取り組み

JBBでは今回のアンケート結果を受けて、これだけの被害が起きているにも関わらず、今まで全く対策がなされていなかったことを深刻に受け止めました。
女性が好きなファッションを選び、それを身に付けて自由に外を歩くことに障害者という違いははありません。

この様な被害が繰り返えし起きている原因の一つに、視覚障がい者に対する正しい誘導や対応の仕方がよくわかっていない、全員に正しく共有されていないことが挙げられます。

視覚障がい者にとって誘導や声掛けは必要なサポートです。


声を掛けてくれた人を加害者にさせないなめに、そして今まで正しい誘導方法がわからず、声掛けを躊躇してしまっていた人達に安心して声を掛けていただくために、JBBでは視覚障がい者に対する正しい誘導方法や対応の仕方が一目でわかるハンドブックを作成しております。

このようなバンドブックも多くの人にとって手に取りたくなるもの、置いておきたくなるものでなければ意味がありません。
スタイリッシュなデザインで、インテリアや景観にも邪魔をしない新しい視点の対応マニュアルです。全国の公共機関・企業・サービスを提供する全ての人が活用することで、一人でも多くの人が安心して助け合える社会に向けて取り組んでおります。

視覚障がい者おもてなしハンドブック

¥480(税抜)